ハニーレモンソーダ

総合評価 4.08

ストーリー

4.1

キャラクター

4.2

メッセージ

4.0

オリジナリティ

3.9

ビジュアル

4.2

内向的だった石森羽花は、高校で出会ったレモン色の髪を持つ三浦界に心を揺さぶられる。彼の軽妙な言葉や行動に引かれ、閉ざしていた気持ちが少しずつほぐれていく。友情や部活の悩み、ほのかな恋の予感を交錯させながら、羽花は自分の声を見つけるべく奮闘。炭酸のように弾ける毎日は甘酸っぱく、時に切なくも爽快だ。そのささやかな変化が、新たな扉を開ける鍵となり、光を射し込ませていく。いつしか彼女は、背中を押してくれる笑顔に気づきはじめる。

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漫画評論家 桜井橙子氏のレビュー

「甘酸っぱい青春に、刺激のシュワを。」

総合評価

4.08

初々しさと弾けるような青春エネルギーに満ちた本作は、レモンのようにやや酸味のある恋模様と、ソーダのように爽快な成長ドラマが融合した読後感をもたらす。石森羽花の不器用さと、それを導く三浦界のさりげない優しさの対比が、ページをめくるたびに微細なときめきを誘うのだ。人付き合いが苦手な者が、ほんの少し勇気を出しながら周囲との輪を広げていく姿は、読者の胸をくすぐる共感を呼ぶ。画面構成には適度な余白と繊細な表情描写が多用され、登場人物の心の動きがじんわりと伝わってくる。甘酸っぱさと透明感を携えた、思わず心が踊る青春ジュブナイルである。

ストーリー

4.1

内気な少女と奔放な少年が織り成す青春軌跡は、一見王道に思えて、実は繊細な心の開放過程をじっくりと描き出す。大きな事件ではなく、小さな決心や出会いが積み重なり、やがて清々しい達成感へと至る流れが秀逸だ。シンプルなようでいて、主人公たちが踏み出す一歩一歩に確かな重みが感じられ、その歩幅が物語の深度を自然に増していく。

キャラクター

4.2

石森羽花の控えめな性格と、三浦界の爽快で自由な雰囲気が、作品の核となるコントラストを生み出す。羽花の弱さや迷いを鋭く察しつつも、さりげなく背中を押す界の存在感が印象的だ。また、周囲の友人たちも単なる脇役に留まらず、それぞれが抱える悩みや葛藤をにじませながら物語に彩りを添える。集団の中で自分をどう確立するか、という青春特有のテーマが鮮明になる。

メッセージ

4.0

自分を主張できない子が、他者との関わりを通じて一歩を踏み出す。その勇気が、やがて自己肯定感や周囲への理解を深める糸口となる。誰かを支えたり、逆に支えられたりする経験が、青春期における大きな財産となる点を穏やかに示す。本作は、そうした小さな積み重ねこそが心を強くすると説いている。それは誰にも当てはまる普遍性を帯び、穏やかでありながら芯のあるメッセージとして胸に響く。

オリジナリティ

3.9

女子高生の成長物語と王道ラブコメ要素の組み合わせは珍しくない。しかし本作は、レモン色の髪を象徴的に用いた演出や、炭酸を連想させる弾む空気感で独自の世界を形作る。甘くなり過ぎず、かといって苦味や暗さに傾きすぎない絶妙なバランスが、新鮮な読後感を導く。さらに些細なエピソードにもキラリと光る演出意図があり、繰り返し味わうほどに発見があるのも魅力だ。

ビジュアル

4.2

キャラクターの表情や髪の色彩が際立つ描き込みは、作品の雰囲気を軽やかに盛り上げる。特に“レモンソーダ”を思わせる三浦界のヘアカラーは、羽花との対比を視覚的に印象づける絶好のアクセントだ。背景の取り扱いやコマ運びも分かりやすく、勢い重視の場面としっとり見せる場面を巧みに切り替える。空間に漂う爽快感が絵のタッチから伝わり、読者を甘酸っぱく弾ける青春へと誘う。